新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン接種の進行状況が注目を浴びている中で、これまで思ったように進展してこなかったのが治療薬の開発である。そうした中で厚生労働省は7月19日、中外製薬の新型コロナに対する抗体カクテル療法「ロナプリーブ」を特例承認した。 この薬はすでにアメリカで2020年11月21日に緊急使用許可を取得し、同様の許可はドイツやフランスでも取得しているが、これらはいずれも正式承認前の緊急避難的措置。いわば「仮免許承認」とも言える。正式承認されたのは日本が世界初。新型コロナに対する治療として日本国内で適応を持つ薬剤は、これでようやく4種類目だが、既存の3種類がいずれも中等症以上の重症度で使用されるのに対し、ロナプリーブは条件次第で軽症に使える初の薬でもある。
また、既存の3種類の治療薬である抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾン、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブはいずれも他の病気の治療を目的に開発されたものの中から、新型コロナに対しても有効という臨床試験データが得られたために効能が追加された通称「ドラッグ・リポジショニング」で生み出されたもの。つまり最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初承認でもあり、「正真正銘の新型コロナ治療薬」とも言える。
■ロナプリーブってどんな薬? 今回承認されたロナプリーブは単一成分の薬ではない。医薬品として使用するため人工的に製造した抗体は別名「抗体医薬品」と呼ばれるが、ロナプリーブはカシリビマブ、イムデビマブと呼ばれる2種類の抗体医薬品が含まれる注射薬である。複数の抗体医薬品で行う治療であることから、酒やジュースなど複数の飲料を混ぜて作られるカクテルになぞらえて、この薬を使う治療法は「抗体カクテル療法」と呼ばれる。
そもそもこの抗体はアメリカの製薬企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ社が最初に作り出したもので、現在売上高で世界第1位の製薬企業であるスイス・ロシュ社が同社と提携して獲得。ロシュ社の子会社である中外製薬が日本国内での開発・販売ライセンスを取得していた。ちなみに中外製薬は1925年創業の日本の製薬企業だったが、2002年にロシュ社が過半数の株式を取得し、同社のグループ会社になっている。 ロナプリーブが新型コロナ患者でどのような効果を発揮するかを説明するためには、まず新型コロナウイルスがヒトの体内でどのように感染を起こしているかを知っておく必要がある。
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