塩野義製薬が開発中の新型コロナウイルス感染症の飲み薬について、厚生労働省に製造販売の承認を申請してから2カ月以上がたった。国産初の飲み薬になることが期待されるが、厚労省は審査に慎重な姿勢を示し、承認に至っていない。今国会では、緊急時に医薬品の迅速な実用化を目指す「緊急承認制度」を盛り込んだ関連法案を審議中で、この新制度を活用する案が浮上している。
「国内企業が開発する治療薬の実用化は重要な課題だ。しっかりと後押ししたい」。後藤茂之厚労相は4月22日、塩野義の開発に対する最大62億円の追加支援を発表した。ただ、承認を審議する厚労省の部会の日程はいまだに明らかになっていない。
塩野義が中間段階の臨床試験(治験)の結果をもとに審査する「条件付き早期承認制度」の適用を求めて承認申請したのは2月25日。同制度は治験に時間がかかるケースなどで最終段階の治験完了前でも申請できる仕組み。塩野義の飲み薬も効果が確認できれば適用されるとみられていた。
ところが2つの主要評価項目のうち1つで明確な結果が出ず、厚労省内に慎重意見が広がった。中間段階の治験結果では、ウイルス量を減らす効果は確認できたものの、吐き気や嘔吐(おうと)などを含めた12症状の改善についてはっきりとした偽薬との差が出なかった。
治験の実施時期は今年1~2月。塩野義は症状が軽いとされるオミクロン株の影響があるとみる。一方、オミクロン株に特徴的な症状とされるせきや喉の痛み、発熱などの5症状をみた場合は改善を確認、4月の国際学会で発表した。
そんな中、厚労省内では今国会で成立見通しの緊急承認制度の活用を想定する声が上がる。安全性が確認され、有効性が「推定」される段階で医薬品を承認できるため、明確な効果の確認が必要な条件付き早期承認制度に比べて承認のハードルが下がる可能性がある。世界的大流行(パンデミック)などの緊急時に適用されるが、4月28日の参院厚生労働委員会で厚労省幹部は「現在の感染状況は緊急時に該当する」と答えている。
国会でも迅速承認を求める意見が出る。自民党の小鑓(こやり)隆史氏は3月の参院予算委員会で審査の迅速化を訴え、「国産で承認申請している薬が万が一、米国で先に承認されれば、今後、国内で薬を作ろうという企業はなくなる」と指摘した。実際、塩野義はコロナの治療薬の備蓄確保を急ぐ米国政府とも生産、供給などに関する協議に入ったことを明らかにしている。
新型コロナをインフルエンザ並みの感染症にするためには、服用しやすい飲み薬の登場が必至。国産飲み薬の実用化の時期に注目が集まっている。(有年由貴子、安田奈緒美)
塩野義製薬の飲み薬 新型コロナウイルス感染症の軽症から中等症の患者を対象にした治療薬。「プロテアーゼ阻害剤」というタイプで、ウイルスが自身のタンパク質を作るために必要な酵素の働きをブロックする仕組み。現在、国内外で実用化されている飲み薬の対象は重症化リスクのある人に限定されるが、塩野義は重症化リスクのない人も対象に治験を行っており、より多くの人に処方できる可能性がある。すでに実用化されている米メルクの飲み薬と同様、動物実験で胎児に奇形を引き起こすリスクが確認されている。
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