Saturday, March 19, 2022

SMBC日興 組織関与どこまで パワーエリート逮捕 - 産経ニュース

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市場の公正さを担うべき大手証券会社幹部がなぜ、疑惑の取引に手を染めたのか。SMBC日興証券をめぐる金融商品取引法違反(相場操縦)事件では、幹部4人が逮捕されるという異質さに加え、同社の管理体制の不備も浮き彫りとなった。東京地検特捜部は、4人の上司に当たる同社副社長を任意で聴取。「事前相談はなかった」などと関与を否定しているが、特捜部は法人の責任も重いとみて捜査している。(荒船清太、吉原実、石原颯、永井大輔)

ゼロから立ち上げ

「エクイティ部門の看板が逮捕されるとは…」。SMBC日興の関係者は動揺を隠せない。

4人は令和元年12月~2年11月、市場が閉じる直前に特定の銘柄で大量の買い注文を入れて株価を維持したとして逮捕された。専務執行役員、ヒル・トレボー・アロン容疑者(51)は、株の自己売買部門を統括する「エクイティ本部」の本部長だった。

「日興を立て直してくれ」。元上司によると、ヒル容疑者はそう請われて平成26年、外資系証券から転職。他社から数十人の人材をかき集め、SMBC日興のエクイティ部門を「ほぼゼロから立ち上げた」(元上司)とされる。

周囲には「勉強で来日した際に日本に魅せられた」と話し、30年以上を日本で過ごしてきた。元上司は「新人のころから能力は抜きんでていた」と話す。

同本部の副本部長だったアヴァキャンツ・アレクサンドル容疑者(44)は、ヒル容疑者の右腕として活躍。ライバルの証券関係者は「仕事が巧みで何度も悔しい思いをさせられた」という。28年3月期に188億円だったトレーディング損益を令和3年3月期には773億円に急増させた。

「パワーエリート」

「チーム・ヒル」の中核だったのは、逮捕容疑の5銘柄すべてに関わったとされる山田誠容疑者(44)だ。同本部のエクイティ部長を務めていた。

米国の大学を出て業界の雄、ゴールドマン・サックス証券に入り、「マック」の愛称でトレーダーとして鳴らした。11年前の3月11日、人々が未曽有の地震に逃げ惑う中でも、ひとりヘルメットをかぶり、混乱する金融関連市場をパソコン画面で見守り続けた。同僚は、こうした山田容疑者のタフさを表す逸話はよく聞いたという。

元部下によれば、「仕事と家庭を大事にするパワーエリート」。平成27年にSMBC日興に移り、30代にしてエクイティ部の部長となった。「コンプライアンス意識の塊」。元部下はそう評するが、山田容疑者は「リスクを恐れるな」とも周囲に話していたという。

部またぎ情報共有

エクイティ・プロダクト・ソリューション部長だった岡崎真一郎容疑者(56)は、逮捕容疑の舞台となった「ブロックオファー」を担当。他の3容疑者と同じく転職組だが、「おとなしく目立たないタイプ」(同僚男性)という。

直前の終値を基準に市場時間外に大株主から株を買い取るブロックオファーでは、証券会社は転売先を確保すれば確実に利益を得られる。株の流動性が企業の指標の一つとなる中で大株主の売却需要が増え、SMBC日興では24年から始まった。

同社のブロックオファーが他社の同種取引と異なるのは、投資家に取引を打診する際、取引日を曖昧にせず、翌日になるとの見込みを伝えるところだ。

特捜部の事件の見立てはこうだ。ブロックオファーを打診された投資家らは取引日に、買い取り価格を安くするために打診された銘柄の「空売り」を仕掛け、株価を下落させる。これに対し、山田容疑者らは買い注文を出して株価を上げ、大株主が納得する水準までに株価を持ち直す-。

取引日を明示することによって投資家に空売りを誘発しやすい同社の制度設計は、顧客確保で他社との競争が激しい中、大きな強みとなっていたという。

山田容疑者らは、「正当な業務の一環だった」と容疑を否認しているという。

一方、特捜部は、山田容疑者と岡崎容疑者が部をまたいで「終値関与」について情報共有し、ヒル容疑者にも報告していたとみて捜査。こうした取引に警告が出ていたにも関わらず、審査部門が見落としていたことも判明している。

捜査の焦点はどこまで組織的に関与していたのか。特捜部は金商法の両罰規定に基づき、法人としての同社を立件することを視野に捜査。エクイティ本部を統括していた副社長にも報告の有無や管理体制などについて聴取を重ね、解明を進めている。

■〈独自〉SMBC日興、別社員も相場操縦疑い

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